スーホの日記

これからの人生のために!

映画『ボストン市庁舎』

フレデリック・ワイズマン監督の超長編映画を見に行きました。

入場券を購入するときに保険証を見せたら『市役所割』で当日2800円のところ、2200円で鑑賞できました。市役所や県庁で働いている人は『市役所割』が利用できます。

 

今回の『ボストン市庁舎』は、上映時間が274分。4時間34分の映画です。

間に10分のトイレ休憩がありますが、ほぼ座りっぱなし。映画館の椅子が以前より座り心地がよくなっているとはいえ、やっぱり疲れました。その疲れは、すぐには出ず、その二日後に乗り物に乗って移動したときに急に腰痛として出て来ました。トホホホホ。

 

前作の『ニューヨーク公共図書館~エクス・リブリス』が3時間25分だったので、それより1時間以上長い映画です。前作が面白かったので、前のめりで見に行ったけど、4時間越えの上映時間はさすがに長いと思いました。見ることに疲れました。もうしばらくの間は、映画を見なくてもいいかなと思いました。

 

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『ニューヨーク公共図書館』を見たときは上映の前半部分で睡魔に襲われて、途切れ途切れにしか見てなかったのですが、今回は、バッチリ一睡もせず、休憩前も休憩後も全てをしっかりと見届けました。前回のリベンジということでがんばっていた私とは裏腹に、隣に座っていた人は、前半の中盤から後半にかけて、と後半の前半から中盤にかけては睡魔に負けてました。小さなイビキが聞こえてきたから・・・。眠くなる気持ちがわかるのでそれほど気になりませんでした。その人は休憩時間には真っ先に外に飛び出していったので、寝ているようで実は意識はあったのかもしれません。うたた寝しながら映画を鑑賞できるのもこの映画のいいところの一つ。だけど寝言にはご用心!周りは知らない人達ばかり、とはいえ、ちょっと恥ずかしい気持ちになります。

 

『ボストン市庁舎』は、ボストンの市の仕事をそのまま撮影したもの。市長さんが苦労人かつ民主的な思想の持ち主なので、市長さんのスピーチや市長さんが出席する会議の様子がたくさん出てきます。そのほか、いろいろな場所で市政に関するいろいろなことが話し合われている様子も映し出されます。時には住民を交えて真剣な意見交換が行われ、市という組織は市民のためにあるものなんだなと当たり前のことを改めて感じる流れになっています。

 

この映画の中で意識されているのは、やっぱりトランプ大統領(当時)。彼の政治姿勢の対極の政治が描かれています。だけど市民の声を聞く市政というのは、手間も時間も必要だから、とにかく大変。人って公共のために、公共の場で発言するときは、自然と自分勝手なことは言わず、あるべき方向にみんなの意見が集約していくものなんですね。これだという結論みたいなものに辿り着くまでのあれこれこそが大事なんだと思いました。結果が決まっていたとしても、あるべき結果が見えているとしても、市民が集まって話をして、人の意見も聞いて、問題を明らかにして、問題解決に向けて考えることこそが民主主義なんだと実感しました。

 

私も市役所で働いているので、参考になるかなぁと思って見に行ったのですが、市役所で働く人にとって一番大事なことは聞くことなんだと感じました。これが簡単なことのようで案外難しいことなんです。自分の目の前にいる人が自分と同じような考え方をする人ばかりではないので、相手のことを考えつつ、自分の勝手な解釈を排除しつつ、相手が何を伝えようとしていて、何を求めていて、相手の話がどのように私達の仕事に関わっていて、どうすれば解決できるのか、そういうことを考えながら話を聞いて、答えられることはていねいに適切に答える。市役所の仕事ってそういうことの積み重ねなんだって思いました。

 

何年か市役所で働いていると、短時間雇用の職員でも組織の論理に染まってくるし、自分なりの経験が相手の話を真摯に聞くことを妨げることもある。初心に帰って仕事に向き合わないといけないなぁと思いました。映画になって映し出されるとかっこよく見えるけど、市役所の業務は日本もボストンも一緒なんだ!というのは嬉しい発見でした。ただ、公共の場で、大勢の人々の前でしっかりと自分の意見を表明するボストン市民の姿は、日本人のそれとはすこし違っているようにも見えました。投票だけじゃなく、そういう市民の姿勢がアメリカの民主主義を支えているのかもしれません。

 

今回の映画鑑賞での体験を一言で表すと

「疲れるほど見ることで聞くことの大切さを知る」

ということになるかな?

 

とにかく全編を見るだけで達成感が味わえる映画でした。