スーホの日記

これからの人生のために!

タラ・ウェストーバー『エデュケーション』

エデュケーション 大学は私の人生を変えた (ハヤカワ文庫NF)

 

「大学は私の人生を変えた」という副題がついたこの本。

やっぱり教育は大事なんだ!って私も思ったのですが、この本が指す教育は学歴とは違う意味での教育。教養に裏付けられた生きる指針みたいなもののことです。

作者のサラ・ウェストーバーはアメリカとイギリスの大学でそれらを身につけたけど、日本の大学でそれらを身につけることができるかな?

就職のためだけに大学が存在しているのであれば、大学は本当の教育の場にはならないと思いました。

 

モルモン教を狂信的に信奉する両親に育てられたタラの兄弟は、学校教育を受けずに自宅で幼いときから両親の仕事を手伝いながら大きくなります。大怪我を負っても医者にかからず、父の考える神の意思に従って暮らす日常には、暴力的な要素がたくさんあります。

 

サラが父や父の影響を受けた母や兄からの支配から脱するきっかけは、大学への進学。

大学生活に馴染むにつれて、自分の家族との関係に異様なものを感じ、心揺れるタラの苦悩と苦闘がこの本の中に、たくさん出てきます。

 

家から出て、寮生活をして、大学という環境にひたり、学ぶことで行きつ戻りつしながらも一人の個人として尊重される自分自身を取り戻してゆく姿に、心が揺さぶられました。

 

学ぶって自分が変わることなんですね。知識を覚えるだけじゃない、本当の学びの尊さ、大変さがわかる本でした。

 

読後思い出したのは『嵐が丘』という古い映画。

孤立した家や家族のなかで繰り返される虐待。

大学という場でなくてもいいから、外の世界とつながることが虐待の連鎖から逃れる手立てなのかもしれません。

 

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