内田樹×えらいてんちょう『しょぼい生活革命』
内田樹さんもえらいてんちょうさんも司会の中田孝さんもいろいろな経験をしていて、その経験からつかみ取った思想を語り合っている本です。
生活や生き方に密着した具体的な話が聞けるのでわかりやすくて面白かったです。
特に結婚観や非正規雇用の話、共同体論や責任の取り方の話に興味を持ちました。
起業して、たとえば100万円の事業を複数作ってマルチに活動してフリーで生きていくっていうのは、これからの生き方の選択肢の一つになるなと思いました。だけど、それをするには多方面の能力が必要だと思うので、若くて元気でくよくよしない人に向いている生き方かもしれません。
雇用されれば、それだけでお金が毎月もらえて、職場には同僚がいる。簡単に社会の一員になれちゃう訳だから、雇われてお給料をもらうのが一番わかりやすい生き方。
きっと、今の日本では大勢の人がそう思っていて、それを目指しているから、いい仕事を得るための競争は激しいけど、社会全体の元気度はちょっと低い。
日本に活気をもたらすには、いろいろな特性を持った人がそれぞれ新しいことにチャレンジして革命を起こしていくことが必要なのかもしれません。
だけどその革命は、日本全体に大きな影響を及ぼす大きな革命じゃなくていいんだよ『しょぼい革命』で十分なんだよっていうのがこの本で語り合っている三人の共通認識。
今の日本に足りないのは、(ロバート)オウエンのような生き方なんですよ。財力があって、政治力がある人は、日本全体を良くしようと思ったら、まず自分の身のまわりにいる人たちがそれなりに幸福で、愉快に暮らせるような環境を作ればいい。その限定的な空間においては、とりあえず常識が通用し、条理が通る。それが達成できれば、満足していいと僕は思いますよ。「この共同体のメンバーの5000人についてだけは俺がとことん面倒見る」というような篤志家が日本のあちこちに出てきて、それがゆるやかなネットワークでつながれたら、いつのまに社会全体が割と住みやすいところになっていた・・・・・ということだってあり得るわけでしょう。(P.53)
という内田樹さんの言葉が、日本のこれから進むべき理想的な姿をそれとなく示しています。
それだったら私にもできるかな。5000人の共同体は無理でも、まずは家庭、そして家族、それから職場。それぞれの場所でしょぼい生活革命を起こしてみようかな。