『おしん』の希望
NHKの連続ドラマ『おしん』の再放送を観てます。
だれもが知っている海外でも人気になったドラマですが、私にとっては今回が初の視聴。面白くて、すっかりはまってしまっています。
1年間の放送も3月で終わり。おしんも60歳を越え、ドラマも終盤を迎えていますが、物語は収束の気配を見せず、波乱続きで最後まで気が抜けません。
先日放映された第272回では、八代希望(のぞみ)役の野村萬さんに圧倒されました。
八代希望は主人公のおしんが幼少時奉公していた米問屋加賀屋の娘さん(加代さん)の一人息子。加代さんとおしんは同い年だったこともあり、親しくなります。同じ人を好きになったり、上京して髪結いを目指すおしんを手助けしたり、二人の間にはいろいろなことが起こるのですが、二人はそれぞれ初恋とは別の人と結婚。その後お互いに苦労を重ねていきます。
加代さんは旦那さんとの不仲を乗り越え、加賀屋の跡継ぎである希望を生んで育てるのですが、旦那さんが商品相場に手を出し、加賀屋は破産。旦那さんは自殺し、心労がたたった両親に続いて加代さんも亡くなってしまいます。おしんが希望を引き取り、自分の子どもと一緒に育てることになるのです。
戦争などつらい時代を乗り越え、大人になった希望は陶芸の道に進むために弟子入り。長年の修行の後、作品が受賞したことを機におしんの力を借りて、独立して自分の窯を持つことになります。
おしんの援助で自分の窯と自宅を建てた希望。おしんに感謝を伝え、おしんの援助の影には亡き母の元恋人の存在があることを知るというシーンが展開するのが第272回。
言葉は少ないけど、本当に希望の感謝の気持ちが伝わってきてジーンとしました。
ゆっくりと言葉を選んでおしんと向かい合って大切な言葉を伝える希望。
希望役の野村萬さんの絶妙な間の取り方、慈愛に満ちた眼、穏やかな表情、
全てが素晴らしかったです。
このワンシーンだけで、今まで観てきた甲斐があった~と思いました。
希望の言葉を受けて、今までの人生を振り返るおしんの言葉も温かく優しさに満ちていて、お金に苦労しながらも努力して懸命に生きてきた、いい人同士の心温まる時間をテレビを観ながら共有できたありがたさで心がいっぱいになりました。
大事なことはありきたりな言葉でも伝わるんだな~と思いました。
むしろ、飾り立てた言葉は邪魔になる。生き方に筋が通っていれば、何も言わなくても相手に大事なことが伝わるものなんだな~と思いました。
このシーンは、ただの演技には見えませんでした。
演技を越えて役者の人柄がそのままにじみ出てきていて、それが私に何かを訴えているように感じました。
長い間能を演じるために精進してきたことが陶芸の道を進む希望の姿と重なり、柔らかで暖かで和やかな人柄がにじみ出て、観ている私も幸せな気分にひたることができたのかもしれません。
演技を越えた芝居、を観たような気がしました。
もしかすると、どんな人にも道が必要なのかもしれないですね。
自分の好きなことを、これだ!って思いながら進んでいけば、何か今までと違う世界に足を踏み入れることができるのじゃないかな。
遅ればせながら、私も自分の道を見つけたいです。
今やってる仕事や家事が既に自分の道なのかもしれません。もう少しつっこんで取り組んでみたら違った景色が見えてくるのかな。
ゆっくりと落ち着いて少しずつ歩いて行きましょう、自分の人生を!