映画『82年生まれ、キム・ジヨン』
朝一番の映画を観るために仕事が休みの平日の9時頃、映画館に向かいました。その時間帯の道路は幼稚園に子どもを送り届けた若いお母さん達が、頑丈なママチャリで行き交っていました。子どもは乗せてないので、みんな結構なスピード。前だけ向いて必死に自転車を漕いでいる、8時の通勤時とは異なる光景。高校生もいないし、サラリーマンもあんまりいません。20年くらい前は私もこのお母さん達と一緒だったんだなぁと懐かしく思いながら、でも、もうちょっとのんびりしてたよなぁとか思いつつ映画館に到着しました。
映画を観ている間も、私もこんなこと言われたなぁとか、あんな風に疲れてたときもあったなぁって自分の子育て期間を思い出してました。
住んでいる国が違っても、子育ての環境が違っても、夫がコン・ユでも、若いお母さんが感じる辛さや苦さは一緒なんだなぁって思いました。
主人公の82年生まれのキム・ジヨンは、がんばっていた仕事を子育てのために辞め、家庭に入ります。産後うつなのか、子育てノイローゼなのか、次第に精神のバランスを崩し、自身の母や祖母が憑依して、義母や夫に怒りをぶつける奇行が時々現れます。それは奇行には違いないんだけど、誰かが憑依している間に彼女が発する言葉は、どれも鋭い指摘で、映画を観ている私もよくぞ言ってくれました!という内容。がんばっている女性を励ますメッセージになってます。その言葉は彼女の本音なんだよね。
でも、それが夫にはただの奇行にしか見えないところに、男女の違いを感じます。
自分自身でいる間は本音を言えず、それが彼女を苦しめていたのかもしれません。
だけど、あるできごとをきっかけに彼女は変わります。あっけないくらいに。
悩みの解決法はずばり! 本音を語ること。
語る相手がいない場合は、本音で生きること。
簡単なようだけどこれがなかなか難しい。
悩みに沈んで、それもかなり深く沈みきらないと、自分を解放することが出来ない。
韓国だけでなく日本もそうだけど、社会が女性に求めているものの重さを感じます。
私は、もし孫ができたら、子どものために手助けしようと思ってたけど、若いお母さんが本当に求めているのは、そういうことじゃないのかも。憑依したキム・ジヨンが母に語った言葉が私にそのことを気付かせてくれました。頼りなく見える夫も彼女の悩みを彼女に解決させようとする優しい夫なんだと思いました。悩むことはつらいことだけど、悩むことや悩みを自分で解決することを奪ってしまうことの方が本人にとっては、もっとつらいことなんだと思います。
突き抜けて変わった瞬間が私にもあったのかな?
そうやって強くなったのかな?
見終わった後にじわじわと心に効いてくる映画です。