橋本治『黄金夜会』
事情があって、小学校六年生で鴫沢家に引き取られた間貫一は、2歳年下の一人娘の美也と出会う。許婚者となった二人。しかし、美也がIT社長に見初められたことで、貫一の大学卒業間近に破談となってしまう。大学を中退し、婚約者だけでなく、家も家庭も同時に失った貫一が日銭を稼ぎながら、再生を図るストーリー。
愛がわからない人たちが直面する愛の物語
美也は気づかない。人間達の間で孤独を感じ、不安に揺れる心を確かに支えるものが、人の愛だということを。愛する人がいて、その人に愛されていれば、不安などというものは近づいてこないのだ。(P.282)
せつないね
私は、貫一が裸一貫でのし上がっていく過程が好き。
頭のいい男が、脇目も振らずにがむしゃらに目的に向かうとき、何事も成就できないことはない、ということがリアルに感じられて、勇気をもらえる。もがきつつがんばっている間にいい出会いもあったはずなのに、全てを切り捨てて、目的に向かっていったのは、正解だったのだろうか?
目的に向かう過程も楽しんでこその人生だー!
と思わずにはいられません。