町田康『しらふで生きる』
これは、エッセイなのだろうか、小説なのだろうか。
読み進めていくと、どんどん、その点が気になってくる。
実話なのだろうか、創作なのだろうか、と。
語られる言葉は、饒舌。
それは、私の知人の酔っ払いのセリフとなんだか似ている。
だから、やっぱり作者は大酒飲みなんだろうなと思う。
酒を断とうとする自分を作家として眺めて克明に描いている。
フラフラしながらも、だんだん仏教の悟りの感覚に近づいていく感じがすごいなと思った。日本人が人生についてのいろいろを考え始めると、そういう所に行き着くものなのかもしれません。
酒を断ちながら、スルスルと自分の心の奥の部分に降りていく感じ。
酒を飲めない人は、どうやってその感覚を感じることができるのだろう。
それをしているのが村上春樹さん、かもしれません。
小説を書き出して、毎日毎日休みなくこつこつとそれを書き続けます。するとそのうちに、暗黒のようなものが訪れてきます。そして僕にはその中に入っていく準備ができている。でもそういう段階に達するためには、時間が必要です。今日書き出して、明日にはもうその中にすっと入れるというものではありません。日々の苦しい労働に耐えて、集中力を高めなくてはならない。それは作家にとってもっとも大切な要素だと思います。だから僕は日々走って、身体性を強化しています。身体トレーニングというのは大事なんです。多くの作家はそう考えていないみたいだけど(笑)
(『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』P.24)
どちらの道を選ぶにしても、作家って大変な仕事です。