ドストエフスキー『賭博者』
読んだことのないドストエフスキーを読んでみなければならないと思い『賭博者』を選択。長編を読了する自信がなく中編を選びました。
主人公の饒舌な語りとルーレットでお金が失われていくスピード感の相乗効果で駆け足で進んでいく勢いのある小説でした。
賭博って怖い。
人生を破滅に導きます。破滅するまで止められないのが賭博の怖さだと知りました。ちょっと楽しんでみよう!っていうことができないものなのね~と実感。
大金持ちのロシアのおばあさんも分別をわきまえていたはずのロシアの家庭教師である主人公の青年も、ただ、お金のためにルーレットを回していた時は勝てたのに、賭博に取り憑かれてからは負けることが増えて有り金全てをはたいてしまう。結局、お金を失うだけでなく生きるためのプライドも失ってしまうという怖ろしい話でした。誰かにだまされた訳じゃなく、自分で破滅の道に進んでいく過程がわからないようでいてわかるというか、わかるようでわからなくて、そこがうまく表現されている小説なのかなと思いました。
小説では、ロシア人、フランス人、イギリス人が登場し、彼ら、彼女らの気質やお金に対する考え方の相違も表現されていて興味深いです。そして舞台はドイツのルーレッテンブルグという町なのでドイツ気質も無視できません。
巻末の訳者の読書ガイドに各国の特質がまとめられています。
ロシア的原理 蕩尽
フランス的原理 収奪
イギリス的原理 分配
ドイツ的原理 蓄財
(『賭博者』読書ガイドP.345 亀山郁夫)
暇をもてあますことも、暇をもてあまして退屈している人と付き合うこともフツーの真面目な人は避けた方がいいのかも。
文句を言いながら、あくせく働いて小さなことに喜びを感じて生きるのが一番の幸せの道だと思う私は、ザ 日本人なのかな。