映画『ウォーナーの謎のリスト』
映画の題名からすると謎なのは「リスト」のはずですが、謎のリストを作成したと言われているウォーナーも謎めいた人物でした。
日本史の知識のない私からすると、本当にわからないことだらけで、見る前よりも謎が深まってしまうという、謎のドキュメンタリー映画です。もしかしたら、謎を、見た人の心に忍ばせるのがこの映画の狙いなのかもしれません。
米国人美術家のラングドン・ウォーナーは、第二次世界大戦下の日本において空爆すべきでない文化財のリスト「ウォーナー・リスト」を作成した。
だけど「ウォーナー・リスト」は実在したかどうかがはっきりせず、実在したとしてもその「ウォーナー・リスト」が空爆地の決定の際に利用されたかどうかも定かではないというのが結論。いろいろな人のインタビューによってリストについて語られるのですが、「ウォーナーのリスト」の謎を追っている最中に、もうひとつのリストがあることが浮上し(司馬遼太郎も『街道をゆく』でもうひとつのリストについて言及をしている)、話がややこしくなります。
そのもう一つのリストを作成したと言われているのは、セルゲイ・エリセーエフ。ロシアから日本にやってきて、東京帝国大学に留学。夏目漱石とも交流のあった研究者です。
日本の文化財が空爆を免れたのは、何らかのリストが存在したからなのか?
存在したのであれば、誰が作成したどんなリストだったのか?
その直接的な答えは映画の中にはありません。
映画の後半、ウォーナーは中国の壁画の一部や文化財をアメリカに持ち帰っていたことが明かされます。
ウォーナーって盗賊だったの?
もしかしてリストを作成した狙いは、日本の文化財を残すためではなく、アメリカに持ち帰るため?
そんな疑惑も出てきて、なんなんだろう? という余韻を残して映画は終わります。
そんな謎めいた映画の中で、存在感をしてしていたのがジョン・ダワーと朝河貫一。ジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』は、いつか読まねば。と思いました。